「草枕」その二
そういえば、「草枕」の主人公はその直後、「口のうちで覚えたところだけ暗誦して見たが、覚えているところは二三句しかなかった。その二三句のなかにこんなのがある。」と、火葬されても心臓だけは燃え残った、という壮絶な逸話を持つロマン派の詩人シェリーの美しい抒情詩「ひばりに寄せて」の一部を引用します。
We look before and after
And pine for what is not
Our sincerest laughter
With some pain is fraught
Our sweetest songs are those that tell of saddest thought.
「覚えているところは二三句しかなかった。」とわざわざ念を押しているワリには、効果的な引用だと思いましたよ。「詩人も楽ではない」ということ以外にもさ。ま、そう、ヒトの世はままならないとグチるだけでは、または、いくらヒバリが魂全体でとはいえ「春が来てうれしい楽しい」とさえずっているだけでは、芸術とやらにはなりゃしませんからね。
まったく、ヒバリもシェリーも漱石も、大したもんですねぇ、姫さま。
以上。
- 「ひばりに寄せて」
- シェリー詩集 (新潮文庫 シ 11-1)
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