「大菩薩峠」と今日の猫
「大菩薩峠」といえば、机竜之介というニヒルな二枚目が主人公の超長編大衆文芸という認識しかありませんでしたの。で、つい最近までは読む気がさらさらなかったのに、読み出したらすごく面白い。
これって、大衆文芸の傑作だと思うのだけれども、当時中里介山は「余は大衆作家にあらず」と息巻いていたみたいなのね。ま、わかる気がするけど。
ちなみに直木三十五の「大衆文芸作法」によると、大衆文芸の定義は、
大衆文芸とは、表現を平易にし、興味を中心として、それのみにても価値あるものとし、又は、それに包含せしむるに解説的なる、人生、人間生活上の問題をもってする物。
ま、どーでもいいんですけどね。
さて余談ですが、「大菩薩峠」の始めの方に幕末の剣豪島田虎之助が出て、結局、土方歳三などの新徴組に間違って襲撃され、単身大立ち回りのあげく命を落とすところがものすごくカッコよかったのだが、先日読んだ山田風太郎の「人間臨終図巻」に、「大菩薩峠」と島田虎之助について次のような記述がありましたよ。
ただし、これは文久二年暮の話という設定になっているけれど、実際の島田虎之助は、それより十年前の嘉永五年九月十六日に病死している。平生大酒家で、血を吐いて死んだといわれるから、胃潰瘍などであったかも知れない。それにしても、死んだ人間を十年後に登場させるとは、中里介山の肝の太さよ。
おお面白い。「小説は事実より奇なり」だし。
「大菩薩峠」の面白さは物語や登場人物の多彩さもあるけれど、読み進むうちにあれよあれよと意外なトンデモ展開になっていくところだわね。つまらなくなってきたなーと思うと、まるで方針がかわったような流れになってまたひきつけられる。本当に 何でもアリですわ。
そういえば姫さま、「大菩薩峠」にはムクという犬がでてきますがいまのところ猫はでてきませんよ。中里介山って、犬好きだったのかしらね。
ま、これもどーでもいいことですけどね。
と思ったら、案の定、物語半ばの20巻にしてやっとブチ猫登場。ついでネズミも出た。ま、これだけ長い話だと出せるものは何でも出さなけりゃってもんだ。しかしそれにしても長い小説だ。しかも未完だなんて、酷だ。
おや、何度か映画化もされているようだけど、あの原作をどう映画化したのかいまいち想像できない。お君や宇治山田の米友や間の山はどーするんだろうなー。お銀さまは映画的によいキャラだと思うが、誰が演じたのだろうか。一度観てみよう。
「[2]猫とわたくし」カテゴリの記事
The comments to this entry are closed.
Comments
大菩薩峠は読んだ事はない上、昔の東映映画であったなくらいの知識です。
ですが、なんとなく中里介山とタランティーノがダブってしまいました。
Posted by: どら猫 | 2007.08.31 23:07