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2006.08.11

「太陽」(2005)

「太陽」のクライマックスはマッカーサーとの会談の部分だと思う。

昨年夏、昭和史のドキュメンタリーが私のブームだった。レンタルできるDVDはおそらくほとんど観たと思うのだが、物忘れ激しく、どのDVDで何を観たか、全部ごっちゃになってしまって詳しく書くことができないのが残念だ。日本側が撮影した当時のニュース映画用の映像もあったが、アメリカ側が撮影した映像がたくさん残っているようで、この場面の実写も観た。ただし、それが第一回目の会談か、二回目だったかははっきり覚えていない。「太陽」では会談に使用した部屋が忠実に再現されていたので、監督もあの映像を見たのだろう。その時に印象的だったのは、昭和天皇の飄々とした表情と対照的な、マッカーサーの困惑顔だった。気のせいかと思っていたが、「太陽」でもそういう感じだった。

美しい静溢な質感の映画だった。キャストもそれぞれとてもうまかった。で、映画とはいえ実在の人物を描いているので、なんの知識もない子供や外国人が観た場合、どういう感想を持つのかちょっと興味がある。日本公開版は、完全版なのだろうかという期待まじりの疑問がふつふつ。

以下は私的メモ

参考:マッカーサー元帥との会見

第一回の会見は1945年9月27日。

この会談での天皇の発言は、以前読んだ菅原裕著
東京裁判の正体 」第8章「天皇問題」5節「マ元帥との最初の御会見」に次のように書かれていた。

「東京裁判の正体」菅原裕著(p.212)

陛下は静かに「自分は今回の戦争に関して重大なる責任を感じている。したがって戦犯として極刑に処せられるることも覚悟している。また自分が天皇の地位にあることが占領統治の妨げになるなら、いつでも退位してよろしい。さらに皇室財産は挙げて司令部の処置にお任せする。要するに自分の一身や皇位はどうなってもよいから、どうか国民をこの上苦しめないでもらいたい・・・ 」という意味のことを申し述べられたということである。

参考:最高戦争指導会議の意義

「太陽」の冒頭のシーンは推測すると沖縄作戦の終焉した1945年6月22日だと思われるが、この日の「最高戦争指導会議」の意義については、以前読んだ角田房子著の評伝
一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾
の「天皇の意志」の章で次のように記されていた。

「一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾」角田房子著(p.305)

この日、天皇が意志を明確に表明したことは、日本が和平への道に決定的一歩を踏み出したことを意味している。それまで暗中模索的であった政府の態度はここに決定し、六人の指導者は、それぞれの立場からその後の言動に微妙な違いを予測させながらも、ひとつの方向へ足なみを揃えることになった。天皇の意図は、この日出席した六人の間だけの極秘事項として、下部はもとより一般の閣僚にも知らせなかった。

「天皇の意志」とはもちろん「戦争のすみやかなる終結」である。

「一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾」角田房子著(p.305)

天皇は、「これは命令ではなく、あくまで懇談であるが」と前置きして、「去る六月八日の会議で戦争指導の大綱は決まったが、他面、戦争の終結についても、このさい、従来の観念にとらわれることなく、すみやかに具体的な研究をとげ、これの実現に努力するよう希望する」と述べ、これに対する意見を各人にたずねた。

なお、同著によればこの会議の構成員は以下の六人。

  • 鈴木総理
  • 東郷外相
  • 阿南陸相
  • 米内海相
  • 梅津参謀総長
  • 豊田軍令部総長
参考:アメリカの天皇制に関する認識・見解
「東京裁判の正体」菅原裕著(p.205)

・・・日本における天皇の地位がたんなる権力者の関係を超越した、民族的伝統的信頼関係であって、日本を占領統治するには、天皇の勢力を利用するのが、最も賢明であると考えたことと、さらに天皇制そのものが、決して侵略的ではなくして、日本の民主化にも不可欠の要素であることを認識した結果、政治的に解決されたのであって、これまた、天皇制の護持は、国体の本質と、国民の忠誠心とによって、もたらされたものであるといい得るのである。かくてマ元帥は天皇をただに「戦犯」としてばかりでなく「証人」、「参考人」等、いやしくも天皇の退位を促すようなことに関しては、いっさい処置しないように細心の注意を払ったのである。 ―中略― 天皇の存在は二十個師団の兵力に相当するというのが、アメリカ軍部の結論であった。 そうして極東委員会も、GHQも、対日理事会も、検事団も日本政府や重臣までもが、これに従って動かざるを得なかったのである。

メモ終わり

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Comments

太陽。
是非観てみたい作品ですね。
自分の意思で言いたい事も発言できない。
天皇と言う立場は、象徴となった今でも変わりないですね。

Posted by: どら猫 | 2006.08.11 at 20:26

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