「ぼくの命を救ってくれなかった友へ」エルヴェ・ギベール
“ぼく”
美しく才能あふれ、将来を嘱望されていたエルヴェ・ギベールはエイズ感染の告知を受け、この著作の刊行によって自らの病気を公表した後も著作を続け、その後病死した。一時、日本でもブームになった。頑固者はブームに乗り損ねる。で、今になって読んでいるというワケだ。
でも、最近のあたくしのようにいまいち元気でない人間がこうした書物に触れ、しかもはまってしまうと、あまり良くないかもしれない。空気の密度が濃くなるというか、重くなるというか、これは感染する。たとえば、この本の最初に“ぼく”が書いているエイズウィルスのように。
いやん。
噂では、血液、精液、涙液といった体液からエイズウィルスが侵入してくるたびに、すでに感染している患者でも、そのつど悪化するらしい。たぶん、被害を最小限に食いとめようとして、そう言われているのだろう。
病気をきっかけに独りぼっちを自覚し、自分が人を愛していないこと、むしろ憎んでいることを認識した“ぼく”自身も、「これ以上毒されたくないのでトーマス・ベルンハルトを読むのをやめた」と書いてあった。
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